2009年06月24日

オーバースティー

 「ママー」とその子は駆け出した。ママも子供の名前を叫ぶように発した。二週間ほど前にママは突然その子の前から姿を消した。その日は三歳にも満たないその子が歯痛で治療を受けるためにママと一緒に歯科医に行く予定だった。歯医者は怖かった、でもママが一緒だし、ママと一緒のお出掛けが待ち遠しかった。駆け出したその子は反射的に母の胸の中に飛び込むつもりだった。ママも一瞬たりとも忘れた事のない我が子を確りと抱きしめようと常に願っていた。ママと娘は悲鳴にも近い声を上げた。狭い部屋の二人の間にはガラスの壁があり、明確に二人の直接的な接触を拒んだ。こんな光景は何度も視た。私の仕事はここから始まる。オーバースティー(在留期間超過)という犯罪を形成してるのだが、家庭環境などの情状面で何とか日本に居られないものかと考える、イラン人家族もフィリッピン家族等のケースは何とか許可された。しかし今回は両親の国籍が違う事やいろいろな要素が複雑に絡み合う。考えれば考えるほど、あの子の叫び声が脳裏を過ぎる。今朝、自宅を出る時に降っていなかった雨も、彼女らの涙の様に雨脚は強まるばかりだ。
posted by ふじはらすすむ at 07:10| 山梨 曇り| Comment(0) | TrackBack(0) | ひとりごと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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