2009年06月29日
カーナビ
朝、玄関を出る。低い雲も最近ではお馴染みの光景だ。見送りのつもりか、病の淵から生還し痩せこけたものの毛並みも元に戻った、他所の人には吠えないお庭番のゴウも黙って見ている。「ゴウ」と声を掛けると尻尾だけ振る。何時もと同じだ。車に乗り込み、シートベルトを締め、エンジンを掛ける。まったく普段と同じ手順だ。エンジンの回転が安定したところで、爽やかな女性の声がした。「お誕生日おめでとうございます。今日の日が素晴らしい日でありますように。」と喋った。驚いた。自分でも忘れていた誕生日を彼女は知っていて、声を掛けてくれた。一寸嬉しかった。一寸元気になった思いだ。嬉しくなり、車の窓を開けて「おい、ゴウ、行ってくるぞ。」と声を掛けた。彼奴の目はキョトンとして、明らかに馬鹿にしているようだった。声の主はカーナビの女性だった。カーナビが喋っただけだった。誕生日も57回目になると嬉しくもない。何時の間にこんな歳になってしまったのか実感はないのだが、体の切れが無くなったのには寂しさを感じている。この一年、どんな生き方をすべきか考えているうちに次の誕生日が来てまた加齢する。この57年、全く進歩がなかったような気がする。
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